看護大卒と専門学校卒の看護師の給料の違いについて解説

看護大卒 or 専門学校卒 給料が良いのはどっち?

看護師になるには、看護大学、専門学校といろいろな進路があります。最終学歴によって看護師になったときの給料は異なります。給料のためにどの進路を選ぶべきか、昇進などに影響があるか気になる人は多いでしょう。

今回は看護師を目指すための進路選びに迷っている人のために、看護大学卒、専門学校卒の初任給、勤続10年の給料の違いに加えて、進路先の違い、退職率についてご紹介します。

看護師の4年制大学卒と専門学校卒の初任給の違い

2020年度の4年制大学卒、専門学校卒それぞれの看護師の初任給を比較しました。平均税込給与総額には、通勤手当、家族手当、住宅手当、夜勤手当、当直手当などが含まれています。

 平均基本給与額平均税込給与総額
高卒+3年過程新卒202,289 円262,277円
大卒208,918 円270,292円
※日本看護協会調査研究報告 2020年 病院看護実態調査 報告書(日本看護協会編)より

4年制大学卒と専門学校卒の初任給の差は、税込給与で数千円~1万円ほどです。

学歴による初任給の差は、想像よりも少ないと感じられるかもしれません。一方、看護師は勤続年数によって給料が上がっていきます。次に、勤続10年の専門学校卒の看護師の給料を解説します。

勤続10年の専門学校卒の給料

勤続10年の専門学校卒の看護師の給料は、2020年度実績で平均基本給与額が244,587円、平均税込給与総額が318,916 円でした。(勤続10年、31~32歳、非管理職の看護師の給与)。

専門学校卒の場合、勤続10年で初任給から4~5万円ほど給料が上がる看護師が多いことになります。

看護師の給料はかなり地域差がある

看護師の給料の違いに影響するのは、学歴だけではありません。ほかの職種の給料と同じく、看護師の給料には地域差があります。

令和2年の賃金構造基本統計調査を参照に、看護師の平均給料を算出、都道府県でのランキングをつけました。上位3位と下位3位の都道府県の看護師の年収を比較すると、以下の通りになります。

順位都道府県平均年収
1位青森県540.5万円
2位岐阜県530.4万円
3位神奈川県521.8万円
46位高知県440.7万円
45位熊本県424.4万円
47位大分県405.0万円
※令和2年賃金構造基本統計調査(厚生労働省)より

もっとも看護師給料の高い青森県の平均年収と、もっとも低い大分県の平均年収を比較すると、およそ136万円の差があります。

日本全国の看護師年収の平均は491.8万円で、26都道府県が平均年収を上回っています。首都圏や東海地方、関西地方の年収は高めの一方、四国地方、九州・沖縄地方の年収は低めの傾向です。

学歴だけでなく、看護師として勤務する地域によっても給与に差が出ることを踏まえておきましょう。

 

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学費込みで考えると、実は専門学校と大学卒の給料の違いはほとんどない

廊下で待機する研修医

看護師給料を比較すると、4年制大学卒の方が専門学校卒よりも高い傾向にあります。そのため、「良い給料を得るには4年制大学卒の方がよいのでは」と考える人も多いでしょう。実は、長い目で見えると4年制大学卒と専門学校卒の看護師の給料の違いはほとんどありません。

4年制大学卒と専門学校卒の看護師給料の違いがない理由は、以下の通りです。

  • 4年制大学の方が学費が高い
  • 専門学校卒の方が早く働ける
  • 結婚や出産などで休業や退職する場合もある

4年制大学と専門学校の学費を比較してみると、平均でおよそ300万円の差があるといわれています。また、専門学校卒の方が、4年制大学卒よりも1年早く看護師として働けます。

  • 学費分300万円
  • 早く働いた分300万円

4年制大学卒と専門学校卒の間には、600万円の開きがすでにできています。初任給で1万円の差なら、ボーナスなども含めて学歴間での年収差は約20万円です。20×30=600万円のため、4年制大学卒は30年間働いてようやく専門学校卒の人の総年収に追いつくことになります。

また看護師として長く働くなかでは、結婚や出産、配偶者の転勤、介護などを理由に休職や退職をする人もいるでしょう。確実に30年間働き続けるわけではありません。以上から、4年制大学卒と専門学校卒の間の給料差は、ほとんどないと考えてよいでしょう。

看護師になるために目指す進路は、給料ではなく自分の希望する特徴やカリキュラムのある学校を選ぶのが重要です。

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どちらに入学するかは特徴やカリキュラムの違いから選択する

看護師は専門的な知識とスキルを持つ国家資格です。そのため看護師国家試験の受験資格として、看護師養成過程やコースを設けている看護系4年制大学や専門学校で学ぶことが求められています。

4年制大学、専門学校それぞれで特徴やカリキュラムが異なります。知識やスキルが身に付けられる、就職に強いなど自分の希望に合った進路先を選択しましょう。看護系専門学校、看護系4年制大学それぞれの特徴とカリキュラムの違いについて解説します。

専門学校

看護系専門学校には、以下の特徴があります。

  • 即戦力として働けるカリキュラムが多い
  • 1年間早く看護師になれる
  • 学費をおさえられる
  • 就職へのサポートが受けられる

看護系を含めて、専門学校とは職種や業種に直結する実践的なスキルを学ぶ学校です。看護系専門学校でも、実習や臨床向きの勉強、カリキュラムが大半を占めています。専門学校卒業後、現場ですぐに働ける即戦力となる知識やスキルを身に付けられます。

看護系専門学校は3年制の場合がほとんどのため、4年制大学よりも1年間早く看護師として働けます。最短で看護師に慣れるため、社会人から看護師を目指したい場合も専門学校を選ぶ人が多いです。

在学期間が4年制大学よりも短いため、学費をおさえられます。経済的にもできるだけ負担なく看護師になりたい人にも向いているでしょう。

専門学校は、就職へのサポートが受けられるのもメリットです。看護系専門学校の場合、病院に付属している専門学校もあります。専門学校卒業後そのまま付属の病院に就職できる場合が多いため、就職活動が楽であるのも看護系専門学校の魅力です。

4年制大学

看護系の4年制大学には、以下の特徴があります。

  • 一般教養が身に付く
  • 看護学をはじめとした体型的な知識が身に付く
  • 研究よりの勉強やカリキュラムが充実
  • 学士を取得できる
  • 看護師のほか助産師や保健師の受験資格が得られる大学もある
  • 管理職に有利な場合がある

看護系専門学校よりも4年制大学の方が在学期間が長い理由は、一般教養などを学ぶためです。看護以外でも幅広い分野の知識が身に付けられます。

看護大学や大学の看護学科では、看護学をはじめとした看護に関する知識を体系的に学べます。また、研究よりの勉強やカリキュラムが充実しているのも看護系4年制大学の特徴です。

看護研究や勉強会など研究成果を発表する機会も多く、発表会へのフォローも大学側で受けられます。研究の成果を看護の現場に活かせる、看護研究チームとして勤務するときにも論文に慣れている、といった点もメリットです。ただし、専門学校卒の看護師と比較すると「頭でっかちで現場では使えない」といわれてしまうこともあるかもしれません。最終的には個人の勤務態度によって評価されるため、学歴によって現場で判断されることはほとんどないでしょう。

学歴や看護師受験資格のうえでも4年制大学にメリットがあります。大学を卒業すると、大学卒業相当と認められる学士を取得できます。また、大学によっては看護師のほか助産師や保健師の受験資格が同時に取得できる過程を設けている場合もあります。将来看護師だけでなく、助産師や保健師として活躍することを視野に入れている場合も、4年制大学進学が有利です。

看護師として長く働くうえで、管理職として声がかかることもあるでしょう。大学卒が管理職を目指すうえで有利になる場合があります。

管理職を目指すなら4年制の大学卒業が有利なことが多い

先頭を走る紙飛行機

勤務する病院によっては、看護師長や部長などの管理職になる場合大卒が条件の場合もあります。管理職になる条件として学歴が設定されていなくても、同じ条件の看護師がふたりいた場合、大卒の方を管理職に抜てきする病院もが多いともいわれています。

ただし看護師の管理職において、学歴を条件としているかは病院によってかなりの差があります。看護師として就職または転職する際、応募する病院の管理職の看護師の最終学歴が分かればベストといえるでしょう。とはいえ、管理職の看護師の最終学歴を公開している病院は少ないです。

管理職を目指すかを含め、自分がどのように看護師として勤務したいかを踏まえた進学先を選びましょう。

看護師の退職率

看護師を目指すうえで、給料とともに知っておきたいのが退職率です。2020年度の看護師の退職率は、全国平均で11.5%でした。

正規雇用看護職員、新卒、既卒看護師それぞれの退職率を退職率の高い都道府県別にまとめると以下の通りです。

正規雇用看護職員の離職率

全国平均11.5%
1位:東京都14.9%
2位:千葉県14.3%
3位:兵庫県14.2%
4位:神奈川県13.8%

新卒看護職員の離職率

全国平均8.6%
1位:愛媛県12.7%
2位:香川県12.2%
3位:東京都12.1%

既卒看護職員の離職率

全国平均16.4%
1位:和歌山県26.8%
2位:奈良県23.1%
3位:福井県22.3%

病床規模別の離職率をまとめると、以下の通りです。

病床数正規雇用看護職員新卒採用者既卒採用者
平均11.5%8.6%16.4%
99床以下13.5%14.8%23.1%
100~199床12.9%10.2%19.4%
200~299床12.4%8.2%14.3%
300~399床11.8%8.0%12.7%
400~499床10.0%7.6%10.6%
500床以上10.7%8.5%11.5%
無回答4.5%0.0%
※日本看護協会調査研究報告 2020年 病院看護実態調査 報告書(日本看護協会編)より

いずれの看護師でも、病床数が少なく規模の小さい病院ほど離職率が高い傾向にあります。

看護師の定着率をはかるために、日本全国の病院では以下の取り組みが行われています。

  • 給与の引き上げ
  • 雇用形態を正規雇用に変更
  • 勤務日数や勤務時間帯の選択を可能とする
  • 業務を特化した看護補助者の導入
  • 看護補助者への研修の充実
  • 看護職に対する看護補助者との協働に関する研修の実施・充実
  • 看護補助者から意見を吸い上げる場や仕組みの構築
  • 看護補助者という職種や仕事内容についてのPR活動 など

看護師という職業は、大きなやりがいがある一方体力や精神面での強さも必要となります。夜勤や長時間勤務、患者さんの死など看護師本人に大きな負担もかかります。さらに、妊娠や出産などのライフステージの変化に伴い、退職を余儀なくされる場合もあるでしょう。

看護師の退職率は決して低くありません。そのため、自分の目指す看護師像をしっかりと持ったうえで進学先を決めることが重要です。

目指す看護師像にあう学校に入学しよう

看護系4年制大学卒と専門学校卒を比較した給料と、進学先による特徴やカリキュラムの違い、看護師の退職率について解説しました。4年制大学の方が給料は高い一方、専門学校の方が学費も安く早く働けることから、看護師として働けば給料の差はほとんどないといえます。給料の高さで進学先を選ぶのではなく、自分が目指す看護師に合致した進学先を選ぶのが重要です。

看護専門学校に関して知りたい方は、当ブログの「看護専門学校のメリット・デメリットは?進学先の選び方も解説」という記事に詳しく載っていますので、そちらも参照してください。


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